• アフガニスタンがどんな国で、どんな歴史をもち、人びとがどんな生活をしているのか……という関心を持っている人は、現在、どの程度いるのでしょうか。わたし自身も、2001年9月11日のニューヨークで同時多発テロが起き、同年10月9日のアメリカによる報復攻撃が開始された際、初めてタリバン政権下のアフガニスタンの現状を知りました。そしてまた、それ以前もクーデターやソ連侵攻、イギリスからの攻撃など、戦乱がずっと続いており、国内は荒廃し、数百万人もの難民がいることを知りました。
  • しかし、人びとの関心は、アフガニスタンに暮らす人びとに対してよりは、テロの指導者と目されるウサマ・ビンラディンの生死などに向かい、さらに、アメリカが今年になってイラク攻撃を開始すると、関心はイラク政権と、フセインの生死に向かい、そして最近では、イラクに関しても急速に関心が失われつつあるようです。
  • そのような状況のなか、NHKスペシャルで、『マリナ』というアフガンの少女を描いたドキュメンタリーが放映されました(6/22、6/24再)。これは、今年カンヌ映画祭で、アフガニスタンから初めて出品され、メラ・ドール賞新人賞など三部門で受賞した映画、「アフガン・零年~オサマ」の撮影の日々を追ったものです。きっとごらんになった方も多いと思います。
  • その主演の少女マリナというアフガンの少女は、父親がタリバンの拷問で障害者になったため、弟とともに物乞いをして一家を支えていました。子どもが一家を支えるために物乞いをする……いまの日本では信じられないことが、いま現在もアフガンで行われているのです。マリナは、映画に出演できて、お金を得ることができましたが、これはもちろん特別な例であり、アフガンでは何百万人もの難民が、いまなお極貧の生活をしているのです。
  • 人間、ある事柄に関心を持ち続けるのは、趣味の世界を除いて、非常にむずかしいことだとは思います。NHKの番組を見て、アフガンの子どもたちに関心を持った人も多いと思いますが、いずれその気持ちは薄れていくことでしょう。しかし、それでもなお、そういった子どもたちに関心を向けさせるような情報は発信しなくてはならないと思います。
左写真は、『生きのびるために』の作者デボラ・エリスさん
(訳者のもりうちすみこさん撮影)

オーストラリアのサイトに、デボラさんとその著書の紹介があります。

  • 小社の『生きのびるために』(デボラ・エリス作、もりうちすみこ訳)は、父親をタリバンに連れ去られ、一家を支えるために、少年の姿となって市場で働く少女パヴァーナを描いた作品です。デボラ・エリスさんはカナダの作家ですが、アフガン難民を支援するNGOの中心としても活動をし、その経験と取材から、この物語を書き下ろしました。この物語の主人公パヴァーナの境遇と、“オサマ”の境遇とがあまりによく似ていて驚きましたが、偶然というよりは、こういう境遇の子どもが、いかに多いのかというあかしでしょう。
  • 小説は、基本的には“おもしろい”のがいちばんですが、この『生きのびるために』と、その姉妹編『さすらいの旅――続・生きのびるために』はお話としておもしろいことに加え、アフガンで何が起こったか、そして、いま何が起こっているかを生き生きと描いた作品です。


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